五十嵐川災害復旧事業についての提案書

平成17年6月14日

三条市四橋架け替え工事に関し集まった市民の会

(通称 三条かけはしの会)

代表 杉野 真司

 


三条市四橋架け替え工事に関し集まった市民の会

(通称 三条かけはしの会)

趣意書

橋は単なる道の延長ではなく、天と地と、彼岸と此岸と、そして人と人とを結ぶ大切な役目を担ってきた。 心をつなぐものとして橋は日本文化の象徴の一つとして考えられており、古来特別な存在として大切に扱われてきた。 五十嵐川にかかる橋も、三条の市民の多くに愛され、ふるさとの原風景として心に記憶されている。

7.13水害からの復旧に伴い、五十嵐川にかかる橋のうち四橋が架け替えられることとなった。 二度と同じ災害を繰り返さないためにも、作業の進捗は急を要している。 しかしながら、復旧工事が、元に戻すという単純作業に終始してしまい、橋を通して育んできた、まちへの愛情をどこかに置き忘れてしまいはしないだろうか。 橋への思いは、十人十色の幾多の思いがある。 まちの顔であり、市民の心の象徴である橋が、市民の声を反映しない無頓着な計画なままに進められることを危惧する。 復興という、これまで以上により良いまちへと、変貌を遂げるためのきっかけとしての視点を失わず、私たちにできる小さな力を結集し、大きな運動へと結実させることが求められている。 

努力をすれば、自分達のまちを自分達の手で、少しでもよりよいまちにできるという自己実現の機会であることを願って本会の趣旨とする。

橋を通して、まちへの愛情を育むことを共通認識とし、本会の活動が、少しでも市民の「心のかけはし」になることを願ってやまない。


提案の概要

現在、三条市民は、大きな被害をもたらした7.13水害からの復興に向け、一丸となって取り組んでいます。五十嵐川でも災害復旧事業が始まり、急ピッチで河岸整備の作業が進められています。 ふたたびこのような災害が起きることがないよう、五十嵐川を安全な河川として整備することはもちろん大切です。

しかし、その一方で、まちを貫いて流れる五十嵐川が三条市のシンボルであり、五十嵐川と、そこに架かる橋に対して、市民一人ひとりが、それぞれの思いを持っていることも忘れてはなりません。

今回の災害復旧事業は、新生三条市の新しいまちづくりのスタートとも位置づけることができるものです。 事業の実施に当たっては、災害に強い安全な河川の整備と併せ、そのような市民一人ひとりの思いを受け止めていくことが大切であると考えます。

この事業により、五十嵐川とそこに架かる橋が、市民の誇りと愛着を持てるものとなることを願い、またこの活動を通じて、市民のまちへの愛情を育むことができるよう、下記について提案します。

橋の設計、意匠のプランにおいて、

@三条の自然、風土に即したものであること。

Aユニバーサルデザインの考えなどを取り入れ高齢者にも配慮したものであること。

B三条の文化、歴史を伝え、市民の愛着をもてるものであること。ひいては教育、観光に結びつくものであること。                 

C市民の意見を聞き、反映させる場を設置すること。

復興事業の計画・実施において

D橋の架け替え工事を通じ、子どもたちが参加できる工夫を取り入れること。

E橋が人と人との心を結ぶ装置であることを再認識し、市民一人ひとりがふるさとへの愛情を高める機会となること。

時間や予算的に厳しい中ですが、市民の自発的な活動を含め、市民の意見を聞き入れ、その声を反映させるなど市民との協働により、以上のことが実現されますよう特段の御配慮を要望します。

●提案その1

五十嵐川の災害復旧事業に伴って架け替えられる四橋(一新橋、常盤橋、御蔵橋、嵐川橋)については、三条の自然や風土、景観に十分配慮した整備を行うこと。


地域の歴史を踏まえた、その地域らしい景観を創り出すことは、新たなまちづくりに欠くことができないものです。

昨年制定された景観法でも、良好な景観が国民共通の資産であり、その整備、保全を図らなければならないということが明記されました。

五十嵐川に架かる橋は、これまで多くの市民に愛され、原風景として心に記憶されてきました。 新しく架けられる橋も、将来に渡って市民に愛され、市民が誇りに思うことができるものにしていく必要があります。

今回架け替えられる橋については、それぞれの橋や地域の歴史を踏まえ、それにふさわしい意匠や素材を取り入れて、市民の心に刻まれ、まちを訪れる人の心にも残る新しい景観を創りだしていく必要があると考えます。



▲嵐川橋…五十嵐川河口に位置し、将来は三条のランドマークとなりうる橋です


提案によせて@

「不易流行」



▲御蔵橋…周囲に青サギやカモなど野鳥が棲みつく自然色豊かな橋です。

五十嵐川の河川改修に伴い、三条の中心市街地の景観が大きく様変わりしようとしています。 風景の変化は、まちの次世代を担う子ども達とこれまでまちづくりに寄与してきた先人達との間で、ふるさとの原風景の記憶に断絶を生じさせるおそれがあります。 時代の推移の中で、受け入れなければならない変化も当然あってしかるべきでしょう。 とはいえ、変わることなく受け継ぎ残していくべきふるさとの姿もあってもいい。 そうした観点に立って架け替えられる四橋をはじめ、五十嵐川に架かる橋をつなぐもの、ひいては川をのぞむふるさとの景観のコンセプトを考えたいと思います。

●提案その2

五十嵐川の災害復旧事業に伴って架け替えられる四橋については、ユニバーサルデザインに十分配慮し、誰もが安心して利用できる整備を行うこと。

三条のまちを貫いて流れる五十嵐川は、まちのシンボルである一方、まちを分断するものとなってしまう恐れもあります。それだけに、川の両岸をつなぐ橋は、誰もが安全に、安心して渡ることができるものにする必要があります。

急速に進む高齢化を背景に、様々な分野で、誰もが使いやすいものやサービスを求めるユニバーサルデザインの考え方が取り入れられるようになっています。

今回架け替えられる橋が、真に五十嵐川の両岸をつなぐものとなるよう、その整備に当たっては、様々な利用者の意見を聞き、ユニバーサルデザインの考え方を取り入れていくことが必要であると考えます。



▲常盤橋…旧まるよし本店と共に、古きよき三条の近代史を物語る橋です。

提案によせてA

「エコシティ三条」



▲一新橋…最後の木橋として、もっとも多くの市民に親しまれた橋です。

基本的に橋にまつわる景観が、これまでとすっかり様変わりすることを市民は望んでいないと思われます。 せめて、一新橋は木橋、常盤橋は石橋のイメージの踏襲が最低限必要なのではないでしょうか。 

先のバイオリージョンをこれからかかる橋をつなぐ基調に据え、生命のシンフォニーを感じる要素を橋に託して、自然の要素(水、金、土、火、日、木、風など)を感じてみることはできないでしょうか。 一新橋は木、常盤橋は石(永遠)、御蔵橋は火(鍛冶)、嵐川橋は日(太陽、夕日、)等、その他、架け替えのない橋でも、例えば、清流大橋は浄水場に近くその名の通り水、渡瀬橋は山や大地、田島橋は凧に因んで風や雲。昭栄大橋は夜の照明が美しく輝くので星や月。新大橋は金物の町三条の中心を結ぶので金(金属、通貨)などを冠してみて統一イメージをはかってみたい誘惑にかられます。 牽強付会に過ぎないと一笑に付されるかもしれませんが、環境の世紀である21世紀に生きる私たちにとって、環境に配慮したエコシティを目指す三条市に必要な事ではないでしょうか。

●提案その3

五十嵐川については、自然環境の保全・再生及び親水性を十分確保し、教育や観光にも配慮した整備を行うこと。

五十嵐川は、まちに貴重な緑とオープンスペースを提供しており、多くに市民が五十嵐側の風景にやすらぎを覚え、また、五十嵐川で遊んだ経験を持っています。

改正された河川法でも、従来の治水や利水に加え、河川環境の整備と保全が法の目的として明記されるなど、河川の整備においては、自然環境の保全・再生の視点が不可欠となっています。

今回の災害復旧事業では、五十嵐川が持つ豊かな自然環境をできる限り保全・再生すると共に、市民が自然と接し、水と親しむことができる場として、架け替えられる橋などの施設についても、三条の風土に即した整備を行う必要があると考えます。

新しい三条市は、市町村合併により、下田・栄地域という古い歴史と豊かな自然に恵まれた観光資源を手にしました。そもそも旧三条地域は、日本の大河・信濃川と清流・五十嵐川の合流点にあり、潜在的に大きな観光資源を持っています。新しい街づくりにおいて、観光また教育の視点から「わが故郷・三条」を見直すべきと考えます。



▲三条の鮭漁…毎年6000匹以上を捕獲、約200万匹の稚魚を放流しています。

提案によせてB

「バイオリージョン(生命地域主義)」



▲熾盛祭での対話…市長との有意義な意見交換に、多くの市民が耳を傾けた。

四橋架け替えに伴って、バラバラに何の統一されたコンセプトのないままに計画されることを危惧する声があります。 現在の三条市には、将来を見据えた、大きな視座に立ったまちのグランドデザインが欠けている…。橋のある風景、橋から眺める風景の美しさなど、三条の風土をより身近に感じられる装置として、橋の設計、意匠計画には総合的なグランドデザインの立場に基づいた仕掛けを取り入れてほしいと思います。

 これから三条の街づくりを考えるで、昨年三条市を訪れた米国の環境運動家ピーターバーグ氏のバイオリージョン(生命地域主義)が参考になるのではないでしょうか。 氏は、その土地の風土に根差したまちづくり、ライフスタイルの重要性を説いており、それらと照合しながら自分達の生活を見直していこうと呼びかけています。

時には氾濫をおこす暴れ川であっても、母なる川と敬称されるように、市民は五十嵐川に命の源を見ているはずです。 五十嵐川にかかる橋に立ってふるさとを見るとき、あるいは橋のかかる風景を見た時に強烈に、故郷への愛情を脳裏に刻み込んでいるはずです。 三条の自然を感じる景観の一部として橋は象徴的な存在であってほしいと、切に願います。

●提案その4

市民参画の機会を十分確保し、行政と市民が協働するまちづくりの下に事業を進めること。

これまでの提案の内容は、いずれも市民の思いを大切にするということに他なりません。 今回の災害復旧事業を、三条の新しいまちづくりにつなげていくためには、市民の思いを大切にし、行政と市民が協力しながら事業を進めていくことが不可欠です。

限られた時間と予算の中での、困難な事業であることは承知していますが、五十嵐川とそこに架かる橋、そしてそれらが創り出す景観を、市民の財産として将来に残していけるものとするためには、事業に関する情報を積極的に公開し、市民の関心を高めながら、様々な形で幅広い市民参画の場、行政と市民の協働の場を設けていくことが必要であると考えます。



▲由利公園…五十嵐川河口にあり、改修後は三条の新たな名所として期待されます。

提案によせてC

「諸橋轍次先生と漢学の里」



▲諸橋轍次記念『論語橋』構想…三条の画家で論語研究者の高井茂氏による提案です。

新三条市となって三市町村をつなぐ存在として諸橋轍次先生を象徴として、精神的バックボーンに据えたいと考えています。 ご自身が下田村、ご両親が栄町(父)、三条市(母)の出身であるということが一つと、近年失われた漢学の素養を通じて情操教育の一面を育みたい思いがもう一方にあります。 嵐川橋という漢学の教養から名づけられた橋もある中で、三条文人を多く輩出し、漢学に造詣の深かった先人たちの歴史を紐解く一助を橋に仕組んではどうでしょうか。 例えば論語の言葉をプレートに刻んで設置し、道行く人の目を楽しませ、心豊かにする工夫をほどこして、観光と道徳教育との両面から、ふるさと意識の向上につなげていけるのではないかと考えます。

●提案その5

橋の架け替え工事を通じ、まちづくりに子どもたちが参加できる工夫を取り入れること。

当会では、自主的に一新橋の廃材を再利用する方法を検討しています。 これらの計画を実行していく段階において、 次の世代に自分達が活躍するステージであるまちの風景を自分達がつくるという気概を持ってほしい。 そしてふるさとへの愛着を深めてほしいと願います。

五十嵐川では、毎年6000匹以上の鮭が捕獲され、採取した卵を孵化して、2000匹を超える稚魚が放流されています。一部の保育園や小学校では、子ども達が鮭漁や孵化施設を見学し、捕獲(死)と孵化と放流(生)という生命活動の現場を見ることにより命の大切さを学んでいます。

今回の河川改修、橋の架け替え事業に関しても、学校や地域の協力により、何らかの形で子ども達が参加できるよう配慮していただきたいと思います。



▲孵化事業の見学会…橋や川における人の営みは、地域愛を育てる教育現場です。

●提案その6

橋が人と人との心を結ぶ装置であることを再認識し、市民一人ひとりがふるさとへの愛情を高める機会となること。

先頃、市民の手で『与十郎堤』探検まっぷが制作されて、6月12日には『五十嵐川左岸ウォークラリー』が開催されました。

毎年5月に行われる『三条まつり』では、早朝八幡宮を出発した奴集団が橋を渡って嵐南地区を巡り、家々と人々のお祓いをしています。

6月の『三条凧合戦』でも、合戦前日に嵐南地区の人たちが凧を抱えて橋を渡り、嵐北の商店街で行われる前夜祭の行列に参加します。

橋は道路の延長として機能するだけでなく、地域に暮らす人々にとって「心のかけはし」として役割を果たしています。

四橋架け替えを通じて強く願うことは、災害からの復興を経て、より一層増すふるさとへの愛情を深める機会となることです。



▲常盤橋を走る奴さんたち…毎年嵐南地区にわたり、家々を廻ってお祓いします。

この会について

「三条かけはしの会」発足の経緯とまちづくりへの想い

高橋市長が市長職に立候補された際、市政に市民の声を反映させる仕組みづくりを実行する事を公約に掲げられました。 その言葉の通り、まちづくり総合計画の策定をはじめ多くの場面で積極的にワークショップ等を開催され、市民と行政とが一体となっていろいろな意見を出し合い、互いに協調関係を築く環境を整えて下さったと感謝しております。

今回、三条かけはしの会に集まった十数名のメンバーの多くが、高橋市長の政策における行政と市民との協働という中で育ってきた者ばかりです。 これまでのワークショップ等は概ね行政側の呼びかけに応じて集まったという受身の姿勢でした。 時には行政の予算消化の為に行われたワークショップもあったかもしれませんが、そうした折も、一市民としてまちに何ができるかを考え、そうした知恵を身につけるスキルアップの場としてとらえ、積極的に参加することで能動的な性質を身に付ける努力を重ねてきました。

本日の提案も行政との関係において単なるお願いをする為のものではなく、お互いに一市民としてフラットで友好的な協調関係を築く為の機会であることを心がけたいと考えています。

 重ねて、私たちはこれまで、市民活動のファシリテーター役として、受身ではない能動的な行動を行える存在となるべく努力してきたつもりでいます。 今回の三条かけはしの会の行動も行政に頼まれたのでもない、営利目的でもない、誰に頼まれたものでもない、まちのことを思うあまりに勝手に会を発足させたものではあります。 しかしそうした行動に至った背景には、私達が市長をはじめ行政に育ててもらった結果による、能動的衝動であることだけはご理解頂きたいと思います。

 私たちの会の活動が市民の声をすべて代弁するものであるなどと言うつもりは毛頭ありませんし、災害復旧という緊急を要する工事の進捗を妨げるつもりもありません。

今回の「三条かけはしの会」の行動は、間違いなく私たちがやらなくても市民の誰かが取った行動であって、それは高橋市政が醸成してきた市民活動が開花し、もたらした行動である事を強調したいと思います。

今後、四橋の架け替え並びに河川改修工事の進捗の中で、できる限り、私たちを含め多くの市民の声を反映しながら計画が進められることを切望いたします。

「三条かけはしの会」名簿


金子  靖
955-0843
三条市条南町20-14

川瀬 弓子
955-0845
三条市西本成寺1-2-22

吉川 静
955-0031
三条市東大崎1227

小林 知行
955-0803
三条市月岡1-19-6

坂田 匠
955-0084
三条市石上3-12-27

杉野 真司
955-0064
三条市横町2-1-31

韮澤 拓
955-0842
三条市島田1-2-3

長谷川 直
955-0842
三条市島田3-5-15

山井 太
955-0057
三条市新光町13-12

渡辺 康弘
955-0096
三条市井戸場143

●事務局

・島田伸子
955-0842
三条市島田1-12-6

・渡辺五月
959-0121
分水町地蔵堂 2057

・長谷佑子
955-0031
三条市東大崎1227



※会への参加はそれぞれが一市民での立場ではありますが、JC、PTA、NPO団体、会議所青年部等各種団体にネットワークを持っている人たちでもあり、その広がりをも大切にしております。

 

三条時代、杉野さんから分かりやすい提案書の作成を依頼され、まずA3版で作成。
その一部をホームページ化し、ネット上で公開しました。
写真は、すべて私が撮影した作品です。



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